心温まるストーリー★介護の現場から~介護すること、されること~★
自分で自由に出かけたいの!〜思いは叶う〜
2024-10-01
「ありがとう!」をチカラに変えて
退院時から福祉用具専門相談員として担当させていただき1年半ほど経つ、89歳お一人暮らしのNさん。
13年前に直腸がんと診断されて以来、転移とその治療を繰り返され、今日に至るまで闘病生活を続けていらっしゃいます。
昨年には敗血症を発症され、娘様も回復は難しいかもと思われていたそうですが、奇跡的な回復力とその後の懸命なリハビリで何とか歩行器をお使いになれる状態となり、在宅復帰を果たされました。
自宅内での移動には歩行器が必須でしたが、幸いなことに高齢者向けマンションにお住まいで、要所には手すりが設置され、バリアフリーで間口も広い為、歩行器を利用するには問題ない環境でした。
デイサービスまで持ち運ぶことも考慮し、軽量でコンパクトなタイプを希望されていましたが、反り腰で歩行時に後方重心になりやすい為、安定感のある機種を選定させていただきました。
デザインも含めて非常に気に入られ、今では「良い歩行器を選んでくれた!」といつも感謝の言葉を掛けてくださり、訪問時には真っ先に「ありがとう!」と声をかけて迎えてくださいます。
ある日ケアマネジャーより「玄関ドアが速く閉まってしまうので急いで出入りしないといけない。ドアの開閉時に支えにできるレンタルの手すりを選んであげて欲しい。」と相談がありました。
選定のため訪問しますと、玄関ドアの閉まる速度が確かに速い!毎朝一階の新聞受けに新聞を取りに行く為に歩行器を使われるのですが、お一人で玄関ドアの開け閉めをされるのは非常に危険と思われました。我々であれば大きな障害とは感じないのですが、足が不自由で小柄なご高齢の女性にとって、重いドアが迫ってくるのは本当に恐怖でしかなかったようです。
実は玄関ドアのほとんどに「ドアクローザー」という装置がついており、そこを調整することで開閉速度を変えることができます。ドライバーで回し調整することでゆっくりと閉まるようになり、Nさんは元より、娘様も感嘆の声をあげられ、非常に感動していただけました。結果的に手すりのレンタルは不要となり、その後は玄関の出入りを安全安心にできるようになりました。
それ以降、ケアマネジャーの定期訪問の際には必ず「ありがとう!と伝えておいて!」と仰ってくださっているそうです。
Nさんのおかげで、我々にとっては些細な事がご高齢の方にとっては非常に大きな障害になり得る、そして福祉用具を今ある環境に当てはめるだけではなく、環境全体を見直し、生活動線を家具の配置や様々な工夫で変えていくことで生活が劇的に改善することに改めて気付かせていただきました。
現在は週5日デイサービスに通われ、身体を動かしたり、お仲間とのお喋りを楽しみに日々過ごされています。
Nさんは45年の長きに渡りご主人と寿司店を切り盛りされ、まさに働きづめの人生だったそうです。やっと落ち着き平穏な日々が始まると思った矢先に病魔に襲われるのですが、幾度となくそれを奇跡的に乗り越えてこられました。そんな壮絶な体験をされているからこそ、関わっている全ての方方への感謝の思いを常に忘れず、前向きに明るく過ごされる姿や、娘様との気兼ねのない親子のやり取りにいつも元気を頂いています。
Nさんの心からの「ありがとう!」という感謝の言葉をチカラに変えて、これからも日々精進し、福祉用具専門相談員道を極めていきたいと思います。
株式会社ウィズ東大阪センター 福祉用具専門相談員 山村光弘